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クリプトコックス症
「クリプトコックス症」は真菌つまりカビの仲間が体内に入ることで起こる感染症です。原因になるのはクリプトコッカス属の菌で空気中の粉塵に混じった菌を吸い込むことがきっかけになる場合が多いです。最初に影響が出やすいのは肺で咳などの症状が出ることがあります。ただし体の抵抗力が落ちている状態では肺から別の臓器へ広がることがあり脳や脊髄を包む髄膜に及ぶと重い症状につながることがあります。日常生活で人から人へうつる感染症ではないと考えられていて環境中の菌への曝露が主な出発点になります。
1.クリプトコックス症の原因
●病原体
クリプトコックス症の原因菌はクリプトコッカス属の真菌です。代表的にはCryptococcus neoformans(クリプトコッカス・ネオフォルマンス)とCryptococcus gattii(クリプトコッカス・ガッティ)が関与します。これらは酵母に近い性質を持つ真菌で体内に入ると免疫の働きと拮抗しながら増えることがあります。
●感染経路
クリプトコッカス属の真菌は乾燥した鳥の糞や土壌などに存在します。糞や土が乾いて舞い上がった粉塵を吸い込むことで気道から体内へ入り肺に到達して感染が成立します。皮膚に触れたことだけで感染する状況は一般的ではなく環境中の粉塵を吸い込む経路が中心です。
2.クリプトコックス症の症状
●肺クリプトコックス症
肺に感染が起こるタイプで呼吸器の症状が主体になります。咳が続くことがあり息苦しさや胸の痛みが出ることもあります。症状が軽い場合は気づきにくいこともありますが画像検査で肺の陰影として見つかる場合があります。
●全身性クリプトコックス症
肺で増えた菌が血流などを通じて別の臓器や組織へ広がる状態です。中枢神経系や皮膚などに影響が及ぶことがあり全身の不調として現れることがあります。
●髄膜クリプトコックス症
菌が中枢神経系に侵入して脳や脊髄の周囲に感染が広がるタイプです。頭痛が強くなることがあり意識がぼんやりするなどの意識障害やけいれんが現れる場合があります。放置すると重症化しやすいので早期の受診が重要です。
3.感染のリスク因子
●免疫抑制状態
免疫が弱っている状態では感染が成立しやすくなり広がりやすくもなります。例としてHIV感染や免疫抑制剤の使用などが挙げられます。基礎疾患や治療の影響で抵抗力が落ちている人や動物では特に注意が必要です。
●環境への露出
鳥の糞が多い場所や土壌の粉塵が舞う環境にいる時間が長いと吸い込みの機会が増えてリスクが上がります。清掃や作業で乾いた糞や土を扱う場面では曝露が増える可能性があります。
4.診断と検査
●病歴と症状の評価
どのような症状がいつからあるかを確認し生活環境や基礎疾患や服薬状況も含めて感染の可能性を判断します。鳥の糞や土壌に触れる機会が多いかどうかも重要な手がかりになります。
●画像検査
肺クリプトコックス症ではX線やCTスキャンで肺の異常所見を確認します。肺炎に似た陰影や結節が見える場合もあるため画像だけで決めつけず他の検査と組み合わせて判断します。
●血液検査
血液検査でクリプトコッカス属の抗原を調べることがあります。抗原が検出されると感染を強く疑う材料になります。
●液体培養
感染が疑われる部位から採取した試料を培養して真菌の存在を確認します。培養で原因菌が確認できると診断が確実になり治療方針も立てやすくなります。
5.クリプトコックス症の治療
●抗真菌薬
治療の中心は抗真菌薬です。アムホテリシンBやフルコナゾールなどが用いられて感染の部位と重症度と免疫状態に合わせて薬剤や治療内容が選ばれます。症状が強い場合や中枢神経系に及んでいる場合はより慎重な管理が必要になります。
●治療期間
治療期間は短期で終わるとは限りません。感染の進行度や免疫の状態によって数週間から数ヶ月かかることがあり途中で症状が軽くなっても自己判断で中断しないことが大切です。
6.予防と注意
●免疫力の維持
免疫抑制状態の人は主治医と相談しながら治療や体調管理を続けることが重要です。感染を疑う症状が出たときに早く医療機関へつながる体制も予防の一部になります。
●適切な衛生
鳥の糞や土壌を扱う場面では粉塵を吸い込まない工夫が役立ちます。乾いた糞を掃き集めるよりも舞い上がりを抑える方法を選び作業後は手洗いなどの衛生習慣を徹底します。
●感染リスクの評価
免疫抑制状態にある人や動物は感染リスクが高まるため生活環境や作業内容を見直して曝露を減らすことが大切です。症状が軽く見えても長引く咳や頭痛などがある場合は早めに相談すると早期診断につながります。
クリプトコックス症は主に環境中の菌を吸い込むことで起こり肺にとどまる場合もあれば全身へ広がる場合もあります。特に免疫が弱っている状態では進行しやすいので疑わしい症状があるときは早期に医療機関を受診して検査と治療につなげることが重要です。